きっかけは単純なもので、2015年2月、アフリカのレソト王国を舞台にした写真展を無事に終えて、ホッとひと段落。さて、次はどこに行こうかと考えて、思いつきで行ったこともない…というか見たことも聞いてこともない、この『サントメ・プリンシペ』という、日本人には馴染みの無いこの国に、ちょっとだけ興味が湧いたのだった。
これまでもいくつかアフリカの国に行ったことがあったが、サントメ・プリンシペは他のどの国とも違った雰囲気を持つ、とてもユニークな国だった。日本と同じ周りを海に囲まれた『海国』だからか…独自の文化を強く感じ、そして独特の開放感がある国だった。観光に来る人はほとんどいないようにも思えたが、そんな中でも外国人の僕にも、とてもフレンドリーに接してくれる親切さがあった。また、多くのアフリカの国を旅をする時には必要な緊張感は、サントメ・プリンシペについては、あまり持ち合わせなくても大丈夫だろうなと感じた。アフリカ旅の大変さから解放された旅でもあった。もちろん観光へのインフラはほとんど整っていないので、宿の確保や移動の方法についてはいろいろ問題もあるが、それでも治安に関してはとてもいいのがサントメ・プリンシペの印象だ。日本人で行ったことがある人はほとんどいないかもしれないが、行ってみるとハマる人も多いだろうなぁ、と感じたものだ。
当時、この国をふらりと旅していく中で書いた日記の中に、僕はメモとしてアフリカのことわざを書いていた…
『道に迷うことこそ、道を知ることだ。』
僕はサントメ・プリンシペを地図もなく、そしてあてもなく歩き回り、そしてよく迷子にもなった。偶然出会った人に借りたバイクに乗ってフラフラ散策したり、そのバイクが途中で壊れてしまい、これまたサントメ人に助けてもらって宿まで帰ったり…なんて経験をしていく中で、偶然ひとつのモニュメントに出会ったのだ。
それが赤道記念碑だった。
地球を北半球と南半球とに真っ二つにわけている赤道を、まさに自分の目で確かめてみたのは、その時が始めてだった。もちろん北半球に右足、南半球に左足を置いて、自分の両足を見ながら地球全体と自分を想像してみたりした。
これがきっかけとなり、僕はその後、地球にある赤道のある国すべてを回ることになったのだ。道に迷ったからこそ、ほんの少しではあるが、道を知ることができたのかもしれない。